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5月, 2021の投稿を表示しています

ピアノワンポイントコラム③ 聴く~その1「響きを聴く」

前回のコラム 「音色」って何? 少し安直な言い方に なってしまいますが、 画家の「目」や料理人の「舌」 に匹敵するものが 音楽家の「耳」 ここでは敢えて、 「耳」という部位に 限定してしまいましたが、 音は空気中に 振動を通して伝わるので、 全身で聴く という表現の方が 私は好きです。 * 大切なのは、 ① ピッチ や 音程 を瞬時に判定する だけではなく、 ②時間経過による 響きの変化 を感じる ということです。 * 私が大学時代に 師事した先生は、 響きに関して とてつもなく敏感で、 最初は 一音弾くたびに ”NO!” と言われました。 たまに まぐれで “YES” の音が出せても、 次のレッスンで、 また“NO” の大洪水、、、。 他の生徒さんのレッスンを 見学させていただいて、 客観的に聴けば まだ分かる のですが、 自分が演奏する段になると 先生の様に 細やかな音のニュアンスを 敏感にキャッチすることが なかなか出来ませんでした。 いくら耳で 違いが分かったとしても これまで培ってきた 習慣的な動作に 抜本的な調整が 必要な場合は、 即座に実際の音に 反映出来ないことも あると思います。 ただ、私自身は、 「聴く」ことが 音色と動作の改善に繋がる という体験を 何度もしてきました。 * さて、 なぜこれほどまでに 「響きを聴く」ことが 大切なのでしょうか? それは 音楽表現に必要な 多彩な音色 抑揚やレガート 流れるようなパッセージ 響きの豊かな和音 || 滑らかな音の 連結や融合 は 「響きの陰影」 で体現出来る からです。 Colorful Waves  (2020) by Emiko Sato 響きは 時間と共に変化します。 音を出した瞬間だけでなく 他の音と連結+融合される瞬間も 聞いている必要があります。 これが ①ピッチや音程を判定する ②響きの変化や繋がりを意識する ことの違いです。 *** さて、次回は ピアノワンポイントコラム④聴く~その2 「聴く」ことを阻む要因 について、 自身の経験も交えながら 考察していきます。  

ピアノワンポイントコラム② 音色って何?

ピアノは、 たとえ同じ楽器であっても、 弾く人によって 音色が異なります。 透明感のある音 深みのある音 あたたかい音 かたい音 まるい音 かわいた音 潤いのある音 ・ ・ ・ 「いったい、どうやったらあんな 音が出るんだろう。」 素晴らしい演奏家の 神秘的な、 万華鏡のような サウンドを聴いて こんな風に思う方は 少なくないはずです。 * 音色に 「バリエーション」があると、 さまざまな表現が 可能になります。 絵具を使って絵を描くとき、 色を混ぜ合わせることで、 表現のバラエティーが 増すのに似ています。 各色を混ぜ合わせて 「 新しい色 」を作ったり、 ある色相の 「 濃淡や明るさ 」の変化を つけることができます。 Sonja Kanno Zeitgeist, 2019  Oil on wood, 6 panels (detail) また、 水彩、油彩、クレヨン といったように 様々な絵具を用いることで、 「 質感 」に変化を もたらすこともできます。 * 音の場合は、 「 基音 (ハンマーが触れた弦のピッチ)」 + 「 倍音 (基音との共振によって生まれる音)」 + 楽器 全体 の振動などが 音色に反映されます。 もう一つ重要な要素は 「 空間 」 「光」が無ければ色が存在しないように、 「空間」が無ければ音は存在しません。 そして 弾き手が直接 音色に影響を及ぼすものが 「 タッチ 」 です。 「打鍵」という言葉が 用いられることもありますが、 「打」という漢字のせいで 「固いものを叩く」 といったような 限定的なイメージも 持たれやすいので、 ここではあえて、 「 鍵盤に触れるときの身体の動作 +触れたときの感触 」 || 「タッチ」 という言葉を使います。 +「ペダル」 つまり、 音色のバラエティを増やす ↓ タッチとペダリングの種類を増やす ということになります。 * さて、ここで 前回お話しした 「テクニックを習得する上で大切なこと」 へと話を繋げます。 実際に鍵盤に触れて 音を出す前に ③『どんな音が欲しいか』 ↓↑ ②『何故、そのような音が欲しいのか』 ↓↑ ①『その音を使って何を伝えるのか。』 に思いを馳せてみます。 実現したい「音楽」が あってこその 音色 であって、 実際の演奏では 多彩な音色を「どのように」 使っていくか、 という

ピアノワンポイントコラム① テクニックって何?

(アメリカ留学体験記は一休み中!) 「テクニック」とは 自分が体現(実現)したい事を 可能にする為の手段・方法 です。 ここで生まれる質問: 「あなたはそのテクニックを使って 何をしたいですか?」 つまり、 「何がしたいか、何が欲しいかを知る」ことが テクニック習得の第一歩です。 * ここで、 赤ちゃんを思い出してみてください。 届かない場所に クッキーがあります。 「あそこにあるクッキーのところに行きたい」 まだ歩けない赤ちゃんは、 全身をくねらせて床をはいます。 赤ちゃんはここで、 《ずりばい》というテクニックを 習得します。 さて、 クッキーのある場所に たどり着きました。 「このクッキーを取りたい」 お皿にあるクッキーに 手を伸ばします。 つかもうとするんだけど、 つかめない。 でも、 何度かトライしているうちに、 ようやくクッキーを掴む事が出来ました。 赤ちゃんはここで、 《掴む》 という動作を学びました! いよいよ、 「クッキーを食べたい。」 クッキーを口に運ぼうとします。 運ぶときにクッキーを 何度か落としてしまうかもしれません。 掴んだクッキーを落とさないように 口に持っていきたい、、、。 最初はうまく行かなくても、 いずれ、 赤ちゃんはクッキーまでたどり着き、 クッキーを手に取り 口に運んで食べる事が 出来るようになるでしょう。 赤ちゃんは 一日当たり 《ずりばい》エクササイズ15分 《握力》強化トレーニング15分 といったように 各動作を 個別に練習した訳ではありません。 《クッキーがとりたい、食べたい》 という目的を実現したかったので、 その為に必要な 上記の動作 (技術)を 自ずと習得したのです。 * ピアノの話に戻ります。 どのような音楽を実現したいか、 曲の「像」 (構造や曲想といった 楽曲の イメージやアイデア) が豊かで明瞭であればあるほど それを体現するテクニックは ごく自然に高まります。 理にかなった教本や練習方法 また、 先生方のアドバイスや、 素晴らしいピアニストたちの 演奏などを通して テクニックを習得していく方が 多いと思うのですが、 私達は身体つきも考え方も 一人ひとり違う人間なので、 何故か 思うように いかなかったりして、 試行錯誤を 繰り返すことも 出てくるはずです。 そんな時は 「実現したい目的=音楽」 に今一度