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ピアノワンポイントコラム⑦身体のこと~その2「身体能力」


 
音楽家にとって
「自分の身体と向き合う」ことの
大切さについて
お話ししています:

前回は

①自分の身体の特徴に気づく

ということについてお話ししました。


今回は


自分の身体能力に気づく


ということについてお話しします。



ピアノを弾く事は全身運動です。


中でも、

A. 柔軟性

B. 瞬発力

C. バランス感覚


といった

身体能力を養う事は

演奏の向上に繋がります。


自身の身体能力の特性に

目を向けることで


ー適応できる部分

ー更なる開拓が必要な部分


を見極めることが

できます。


*


A. 柔軟性


肩甲骨周り、

手首などの柔軟性は

腕全体や手首を

縦横無尽に使った

様々なタッチ

を可能にします。


下半身の安定と

腰回りの柔軟性は、

幅120㎝以上ある鍵盤上を

上半身がスムーズに

重心移動するのに

役立ちます。


また

ハーフペダルや

ビブラートペダルなど、

繊細なペダルの

コントロールには

足首の柔軟性が

役立ちます。



B. 瞬発力


瞬発力とは、

瞬時に力を入れたり

瞬時に力を逃がしたりすること、

そして

脳の指令に対して

即座に反応できる能力です。


瞬発力は

「速い動作」や「跳躍」

に不可欠です。


さて、ここでお気づきに

なられた方も

おられると思いますが、


実は

柔軟性と瞬発力は

逆の要素を含んでいます。


柔軟性は

筋肉を緩めることで

アップしますが


瞬発力を発揮するには

筋肉を素早く縮める事

必要になってきます。


また、筋肉には

「速筋」と「遅筋」があり、

一般的に瞬発力に

影響するのは「速筋」だと

言われていますが、


この比率にも

個人差があるそうです。


ただ、持久力には

「遅筋」が必要で、

毎日何時間も練習したり

一回のコンサートで二時間

弾きっぱなしの

ピアニストにとっては

「遅筋」も「速筋」同様

大切なのです(*)。


もちろん

身体を真っ二つに折り曲げたり

足を180度以上広げたりする

ダンサーのような柔軟性や


100メートルを10秒で走る

短距離走者のような

ムキムキの筋肉が

必要なわけではありません。


大事なのは

ピアノを弾くときに有効な


適度な柔軟性

適度な瞬発力


です。



C. バランス感覚


両手両足それぞれ

別々な動作の

掛け合わせ&連携が

必要なピアニストにとって


あらゆる動きを

統率し調整する際に

大活躍する身体能力の一つが

バランス感覚です。


体幹

||

身体の「軸」


を意識して、

インナーマッスルを鍛える事で


バランス感覚を

養うことが出来ます。


Spinal Cloud by Mark Tulin
Spinal Cloud by Mark Tulin

逆の言い方をすれば


普段から

身体の軸に意識を向け、

適度な柔軟性と

瞬発力を駆使し、


全身を使って

ピアノを弾いていれば

自ずとインナーマッスルが

鍛えられます。


また、

インナーマッスル

が適切に使えていれば

無駄な力みも減り

肩こりや腰痛、

腱鞘炎を防ぐことに

繋がります。



ピアノを弾く時に役立つ

身体能力の特徴に

注目することは、


やみくもな練習から脱し、

より明確な指標をもって

取り組む一助

なるはずです



さて、次回はいよいよ「身体」の最終章


ピアノワンポイントコラム⑧

身体のこと~その3


③自分の身体のコンディションに気づく。

④自分の心のコンディションに気づく。


お楽しみに!


【参考文献】
*古屋晋一. "第14回 練習の生理学(1)脳と筋肉がどのように変化するか," (2011),
http://www.piano.or.jp/report/03edc/brain/2011/02/24_12136.html, accessed on August 22, 2021.