文章に例えて
お話ししました。
また、
楽曲には
色々な「音楽の要素」が
大きな骨組みの中に
モザイクの様に立体的に
埋め込まれていて、
建築物のような側面を
持っていることにも
触れました。
では、
このように
いくつもの側面を持つ
音楽が記された
楽譜を読むとき、
一体どこから
手を付ければ
よいのでしょうか?
譜読みの仕方は
人それぞれですが、
次のようなアプローチを
例に挙げてみました。
⇩
①マクロの視点から観察し、
『構造』と『形式』を把握する。
↓↑
②ミクロの視点から観察し、
詳しい『文脈』を把握する。
(→譜読み~その3)
↓↑
③音符のまとまりを
表情記号、様式、
音楽の語法(※1)
に則って
『構造』と『文脈』に
当てはめる。
(=実際に音に起こして検証する)
↓↑
これらの段階に
明確な順序や境界線が
あるわけでは無いので、
実際に譜読みをする時には
①~④を
行ったり来たりします。
今回はこの①の段階について
お話しします。
*
~マクロの視点を使って
楽曲の『構造』と『形式』は
建築物の「骨組み」と「間取り」にあたります。
1.【終止形】(※2)や
各声部の 【旋律線】の動向(☆)を
辿って浮かび上がる
「楽曲の輪郭」が
和声的&音階的基礎構造=
「骨組み」です。
(☆個々の和音や旋律の
細かな動きのこと
ではありません。)
例えば、ある楽曲が
ハ長調(C)
⇩
ト長調(G)
⇩
ハ長調(C)
と変遷した場合、
この楽曲全体の
(和声的)基礎構造は
C:I →V→Iとなります。
この「骨組み」は
建物全体のデザイン
また、
ドラマの
プロット的な役割も
果たします。(※3)
2.【テーマ:主題】(※4)
の有無や変化を目印に
楽曲を区切っていくと
メインテーマの部屋
テーマ不在の通路
第二テーマの部屋
といった風に
いくつかの部屋に
分かれます。
各部屋の配列や
組み合わせに
よって
二部形式
ソナタ形式
ロンド形式
などと区別されます。
メインテーマの部屋→居間
テーマ不在の通路→廊下
第二テーマの部屋→寝室
といった感じで
置き換えてみたら
より具体的な間取りが
イメージできます。
このようにして
音楽を建築物として捉えると
楽譜は設計図のような役割を
果たしていることが分かります。
Photo by Evgeniy Surzhan
ただ、
静止している建築物と異なり、
音楽は
「時間の流れ」と共に
変化します。
時間の流れに沿って
伝えていく音楽には、
『文脈』
が発生します。
楽曲は単なる
「建物」ではなく
特別にデザインされた
建物の中を
行き交う者たちの「ドラマ」
というわけです。
ここで
楽曲を脚本に見立ると
「音楽の基礎構造」→プロット
「音楽の形式」→場面設定
という構図が出来上がります。
次回は
詳しい文脈を追うために
脚本としての楽譜を
ミクロの視点から
読み解きます。
(続く)
*
【様式】:作曲家や作品の時代背景などを反映する演奏マナー&スタイルのこと
【音楽の語法】:音楽の文法・作曲家の語り口やある音型にみられる抑揚やフレージングなどの決まりごと
※2【終止形】:和音の並びのプロトタイプによってもたらされる音楽の流れの区切り
※3 プロット:あるドラマをどのような順序や仕掛けで伝えるかという計画
※4【テーマ:主題】:数種類の【動機】を組み合わせた楽曲を司るメロディ