スキップしてメイン コンテンツに移動

米国の音楽博士課程①:受験編


 以前、
音楽修士課程の入試について
お話ししました。

今回は
音楽博士課程
の入試の準備やプロセスについて
お話しします。

こちらが私が長年お世話になった

ニューヨーク市立大学大学院センターです。


Photo by Alex Irklievski

音楽学部の紹介:

ニューヨーク市立大学大学院センター

音楽博士課程コース

ー音楽留学サイトAnd Vision より


(但し、こちらは2012年の情報なので

授業料等変更があります。

最新情報・詳細は必ず学校の

オフィシャルウェブサイトで

ご確認ください。)


音楽学部には

学術のPhDと実技のDMA

のコースがあります。


ニューヨーク市立大学大学院センターでは

DMA論文はPhD論文と

同様に審査されるため、

実技に加え

学術論文の比重が大きめです。


同じDMAコースであっても、

学校によっては

論文がやや小規模だったり、

論文の代わりに

レクチャーリサイタル

が必須課題だったりと

内容が少し異なるので、

受験前にコース内容と

学位取得条件を確認してから

志望校を検討されることを

お勧めします。



DMAの入試の準備・プロセス


NY市立大学大学院センターの

入試課のページ

を例にとってお話します。


【出願時に必要なもの】

(全ての大学受験に共通して必要な

成績証明書

卒業証明書

推薦状

などについては

出願準備② 具体的なプロセス

で触れているので

そちらをご参照ください。)


①ライティング・サンプル:修士時代に書いた小論文等を計二点、内一点は音楽プロジェクトに関わる内容


②パーソナル・ステートメント:博士号を将来自分のキャリアにどのように役立てていくかなど、志望動機など綴ったエッセイ


③演奏予備審査用映像最低40~50分程度のプログラム、4期 (バロック・古典・ロマン・近代) から少なくとも3期+21世紀の作品


④TOEFLGREのスコア:受験年度によって条件が異なる




【第二次選考】

A. 実技試験(ライブオーディション)

B. 筆記試験(音楽史・音楽理論・分析)

C. 面接


※留学生の場合は

英作文の試験等が

追加される場合もあります。


一般的な流れは



実技試験コールバック→筆記試験


ですが、



現在マンハッタン音楽学校は

何故かピアノ科だけが


筆記試験→コールバック→実技試験


の順に変更されています。



A. 実技試験:


演奏時間は

少し長くなりますが

基本的な流れは

修士のオーディションと

同じです。


(修士課程の

オーディションの様子については

現地オーディション①マンハッタン音楽院

現地オーディション②マネス音楽院

をご参照ください。)




B. 筆記試験:


音楽史

音楽理論

の試験が計2ー3時間かけて

行われます。


試験内容は

学校によって異なりますが、


マンハッタン音楽学校のスタディガイドには

博士課程筆記試験の準備のための

具体的な対策が

非常に簡潔にわかりやすく

記載されているので

一例としてご参照ください。


1.音楽史

バッハはカンタータを何曲書いたか?

「千人の交響曲」を書いたのは誰か?

等を

一問一答形式で答えたり、


作品の時代背景、

様式や技法の変遷などを

エッセイ形式答えるなど、


多くが

音大の音楽史の授業で

習ったであろう内容です。


ただ、

範囲が膨大なので

(特に私の様に

暗記が苦手&忘れっぽい方は)

予めしっかり準備されることを

お勧めします。



☆お勧め文献:音楽史☆

先ほどご紹介した

スタディガイドでは

音楽史が簡潔にまとめられた

以下の二冊(概説)がお薦め文献として

挙げられています。

Studying Music History by David Poultney

Harper-Collins College Outline History of Western Music



これに加えて

マンハッタン音楽学校でDMAを取得した

友人の一推しがこちら。

③The Essential Canon of Classical Music, by David Dubal


クラシックのリスニングガイドとして

まとめられたものですが、

作曲家&レパートリーを

時代順に網羅したい人にお勧めです。

デイヴィッド・デュバル氏の

解説文が光ります。

巻末に音楽用語集付き。


最後に、

米国の音大で音楽史の教科書として

広く使われている

代表的な一冊はこちら。

A History of Western Music 

by Donald Jay Grout and Claude V. Palisca

(最新盤は第10版)


ただ、こちらは少し内容量が多いので

マンハッタン音楽学校のスタディガイドには

「グラウトの音楽史(↑)を一字一句読み込む必要はない」

と、親切に書いてくれています。



2.音楽理論:

分析スコア判定が主となります。


分析:時代や様式の異なる楽曲の

モード、和音、形式などを判別します。

12音技法、ピッチクラス・セット理論

セリー音楽も含みます。


私の場合、

分析は比較的得意な方なのですが、

モードや

セット理論、12音技法関連

経験が浅いので

受験前に特に集中して

復習しました。



スコア判定:題名が伏された

楽曲の一部分を見て、

その楽曲が書かれた時代背景、

様式等について解説、

作曲家や作品名を

判定する試験です。


もちろん、作品名を

当てられるに

越したことはありませんが、

少なくとも

時代や様式の判定は

出来るように準備しておきたいです



☆お勧め文献:音楽理論☆

和声:①Harmony and Voice Leading 5th Edition

by Edward Aldwell, Carl Schachter, and Allen Cadwallader


対位法:②Counterpoint in Composition: The Study of Voice Leading by Felix Salzer and Carl Schachter


形式:③Classical Form: A Theory of Formal Functions for the Instrumental Music of Haydn, Mozart, and Beethoven by William E. Caplin


Sonata Forms by Charles Rosen  


ポスト調性音楽理論:⑤Introduction to Post-Tonal Theory by Joseph N. Straus



だいぶん前のことなので、
具体的な試験内容は覚えていませんが、
特に予想外の問題は
ありませんでした。


C. 面接:


実技試験の直後

試験担当教授から

色々質問を受けたりして、

実技試験と面接が

 セットで行われる場合も

あります。


ただ、多くの場合

フレンドリーな会話と

いった感じです。



以上、博士課程の入試、

その対策についてお話ししました。


***


以降

音楽博士課程の

具体的な内容について

お話ししていきたいと思います。


因みに

博士課程へ入学してから

博士号を取るまで10年かかりました。

一体何故これほど時間がかかったのか、

まずはそこから

お話ししたいと思います。


次回:


私の反省①仕事と学業の両立

「私の反省②ラッシュチケットの思い出 」




お楽しみに!